焼肉店や精肉店で「ホルモン」を選ぼうとしたとき、シマチョウとマルチョウのどちらにするか迷った経験はありませんか。どちらも牛の腸の一部ですが、その見た目や味わいにははっきりとした違いがあります。
この記事では、シマチョウとマルチョウの根本的な違いから、美味しく食べるためのコツまでを分かりやすく整理しました。自分の好みにぴったりの部位を見つけるための参考にしてください。
シマチョウとマルチョウは体のどの部分?
焼肉の定番であるこれらの部位は、どちらも牛の「腸」にあたります。しかし、同じ腸であっても、消化管のどの場所にあるかによって、肉質や役割が大きく変わってくるのが面白いところです。まずは、それぞれの部位が牛の体の中でどのような役割を担っているのか、その正体を確認していきましょう。
牛の大腸にあたるのがシマチョウ
シマチョウは、牛の「大腸」にあたる部位を指します。牛には4つの胃がありますが、その胃の後に続く消化管の後半部分が大腸です。シマチョウという名前の通り、表面にはシマ模様のようなひだが規則正しく並んでいるのが最大の特徴といえます。
この部位は小腸に比べて厚みがあり、非常にしっかりとした弾力を持っています。大腸は消化物が最後に通る場所であるため、筋肉が発達しており、噛めば噛むほど旨みが出てくるのが魅力です。また、一頭の牛から取れる量が比較的少ないため、ホルモンの中でも少し贅沢な希少部位として扱われることも少なくありません。
脂の付き方は個体差もありますが、基本的には表面のひだの裏側に適度な脂が乗っています。小腸に比べると脂の層がそれほど厚くないため、脂っこすぎるのが苦手な方でも楽しみやすい部位といえるでしょう。
牛の小腸を加工したのがマルチョウ
対するマルチョウは、牛の「小腸」を原料としています。小腸は非常に長い器官で、もともとは薄い膜のような組織の中にたっぷりと脂が詰まっている構造をしています。この小腸をただ切るのではなく、くるりと裏返して、脂を内側に閉じ込めた状態で筒状に切り分けたものがマルチョウです。
なぜわざわざ裏返すのかというと、小腸の美味しさの源である「脂」を焼くときに逃がさないためです。小腸の脂は非常に溶けやすく、そのまま焼くと網の上でほとんどが流れ落ちてしまいます。しかし、外側の皮で脂を包み込むことで、口の中に入れる瞬間まで脂の甘みをキープできるよう工夫されているのです。
もともとの小腸は「コプチャン」や「ホソ」と呼ばれますが、この丸い形に加工されたものだけを、私たちは親しみを込めてマルチョウと呼んでいます。見た目の可愛らしさとは裏腹に、濃厚な脂のパワーを楽しめる部位として、ホルモンファンから根強い支持を得ています。
見た目だけで判別するポイントは?
メニューに写真がなかったり、お皿に盛られた状態だったりすると、どっちがどっちか分からなくなることもありますよね。しかし、この2つは形と表面の質感が全く異なるため、ポイントさえ押さえれば誰でも簡単に見分けることができます。それぞれの見た目の特徴を詳しく見ていきましょう。
表面に独特の溝があるシマチョウ
シマチョウを見分ける一番の目印は、やはりその表面にある「シマ模様」です。規則的な溝やひだが並んでおり、見た目が少しザラザラとしているのが分かります。この模様は大腸特有の組織で、焼く前は白っぽく、厚みのある切り身のような形をしています。
形は平たくカットされていることが多く、厚みは5ミリから1センチほどあります。焼く前は少し硬そうに見えるかもしれませんが、火が通るにつれてひだの部分が立ち上がり、独特の香ばしさを放ち始めます。脂がついているのは片面だけで、もう片面はこのシマ模様の皮になっているのが一般的です。
もし、お皿の上で「白いひだひだがある、平たいお肉」を見つけたら、それはシマチョウだと判断して間違いありません。シマ模様がはっきりしていて、肉厚なものほど新鮮で質の良いシマチョウであると言われています。
脂を内側に閉じ込めた筒状のマルチョウ
マルチョウの見た目は、シマチョウとは対照的です。名前の通り、コロンとした「丸い筒状」の形をしています。これは先ほど説明した通り、小腸を裏返して脂を中に詰め込んでいるためです。表面はツルツルとしていてシマ模様はなく、薄い皮で覆われています。
断面を見ると、白い脂がぎっしりと詰まっているのが分かります。まるで小さなマシュマロや白玉のようなビジュアルをしており、焼く前は少し透明感のある白さをしています。カットされた長さは3〜4センチほどが多く、一口サイズに整えられているのが特徴です。
焼いていくと、中の脂が熱で膨らみ、さらにプクッと丸みを帯びてきます。脂がはち切れそうになっている丸い塊を見つけたら、それがマルチョウです。表面の皮が薄いため、中の白い脂が透けて見えることも、シマチョウとの大きな見分けポイントになります。
3つの大きな違いを比較!
さて、ここからは最も重要な「味」や「食感」の違いに踏み込んでいきましょう。シマチョウとマルチョウでは、口に入れたときの印象が正反対といってもいいほど違います。どちらを注文するか決めるために、主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較するポイント | シマチョウ | マルチョウ |
| 部位 | 牛の大腸 | 牛の小腸 |
|---|---|---|
| 脂の量 | 適度に乗っている | 非常に多い |
| 食感 | シコシコした強い弾力 | プルプルとして柔らかい |
| 味わい | 肉本来の旨みが強い | 脂の甘みが際立つ |
この違いをさらに詳しく、3つの視点から掘り下げて解説します。
1. 脂の量と甘みの差
最も顕著な違いは、脂の量です。マルチョウは小腸の脂をすべて内側に閉じ込めているため、噛んだ瞬間に脂が溢れ出すほどのボリューム感があります。この脂は非常に甘みが強く、クリーミーな口当たりが特徴です。脂が大好きな方にとっては、これ以上ないご馳走と言えるでしょう。
一方でシマチョウは、脂の量が適度に抑えられています。全く脂がないわけではありませんが、脂の甘みよりも、噛むことで染み出す肉そのものの旨みを楽しむ部位です。マルチョウの脂が「トロリとした濃厚さ」なら、シマチョウの脂は「サラリとした上品なコク」といったイメージです。
例えば、最初の一口でガツンとした満足感が欲しいならマルチョウが向いています。逆に、お酒と一緒にゆっくりと噛み締めながら楽しみたいときや、脂でもたれたくないときはシマチョウを選ぶのが賢い選択と言えるでしょう。
2. 噛み応えと食感の違い
食感についても、驚くほどの差があります。シマチョウは大腸の筋肉質を活かした「シコシコとした弾力」が持ち味です。厚みがあるため、何度も噛み切る動作が必要になりますが、そのたびに溢れる旨みが病みつきになります。噛み応えを重視する、いわゆる「ホルモンらしさ」を求めるならシマチョウが一番です。
マルチョウは、外側の皮さえ噛み切れば、中の脂が口の中でとろけてなくなります。皮自体も小腸のものなので薄く、小さなお子様や年配の方でも比較的食べやすい「プルプルとした柔らかさ」が魅力です。口の中で脂がスッと溶けていく感覚は、マルチョウならではの体験です。
「いつまでも飲み込めないホルモンは苦手」という方には、マルチョウの方が受け入れられやすいかもしれません。反対に、お肉をしっかり食べている実感が欲しい方には、シマチョウの心地よい抵抗感がたまらないはずです。
3. 焼いたときの香りの変化
焼いている最中の香りにも、それぞれの個性が表れます。シマチョウは皮が厚いため、網の上でじっくり焼くことで、皮目から香ばしい匂いが立ち上ります。醤油ダレや味噌ダレとの相性が抜群で、タレが焦げる匂いとシマチョウの脂が混ざり合う香りは、食欲を強く刺激します。
マルチョウは、焼くことで中の脂が温まり、脂特有の甘く濃厚な香りが広がります。脂が網の下に落ちて炭火に触れると、勢いよく煙が上がり、独特の燻されたような風味が肉に移ります。この「脂の焦げる香り」こそがマルチョウの醍醐味であり、焼肉店の活気を感じさせてくれる要素でもあります。
香りの強さでいえば、脂が焼ける匂いの強いマルチョウの方が周囲に強く広がります。シマチョウはもう少し落ち着いた、香ばしさが際立つ香りが楽しめます。
呼び名のバリエーションを整理しよう
お店のメニューを見たとき、「シマチョウ」や「マルチョウ」と書かれていないことがあります。地域やお店のこだわりによって、別の呼び方を使っているケースが多いからです。混乱しないように、よく使われる別名を整理しておきましょう。
ホルモンはもともと関西地方で「放るもん(捨てるもの)」と呼ばれていた説もあり、今でも呼び名には当時の名残や地方独特の表現が含まれています。
シマチョウは「テッチャン」とも呼ぶ
シマチョウの最も有名な別名は「テッチャン」です。これは韓国語で大腸を意味する「テチャン」からきています。特に焼肉の本場である関西や、老舗のホルモン店では、シマチョウよりもテッチャンという呼び名が主流であることも少なくありません。
また、ストレートに「ダイチョウ(大腸)」と表記しているお店もあります。稀に「上ホルモン」という名前で売られていることもありますが、これは小腸よりも希少価値が高く、肉厚であることをアピールするための名称です。シマ模様、厚み、テッチャンというキーワードをセットで覚えておけば、注文時に迷うことはなくなるはずです。
マルチョウの別名は「ホソ」や「コプチャン」
マルチョウの原料である小腸は、別名が多く存在します。そのままの状態で出す場合は「ホソ」「ヒモ」「コプチャン」と呼ばれることが一般的です。関西では「ホソ」という呼び名が非常にポピュラーで、透き通るような白さを強調した呼び方とされています。
一方で「マルチョウ」という名称は、あくまで裏返して丸く加工したものに付けられる名前です。ですから、メニューに「コプチャン」とあれば平たく切った小腸が出てくることが多く、「マルチョウ」とあれば丸い形のものが出てくると判断できます。
最近では、博多もつ鍋などの流行により「モツ」という言葉が小腸を指すことも増えましたが、これはかなり広い意味での呼び方です。脂がたっぷりと詰まった丸いアレが食べたいときは、「マルチョウはありますか?」と聞くのが最も確実です。
どっちが太りやすい?カロリーの差をチェック
美味しいホルモンを目の前にして気になるのが、やはりカロリーや脂質ではないでしょうか。「ホルモンはヘルシー」というイメージを持っている方も多いですが、シマチョウとマルチョウでは数値にかなりの開きがあります。健康を気にしている方は、以下の情報を参考に選んでみてください。
脂質が多いマルチョウは高カロリー
結論からいうと、マルチョウの方が圧倒的に高カロリーです。その理由は、言うまでもなく内側に閉じ込められた大量の脂にあります。100グラムあたりのカロリーを比較すると、マルチョウ(小腸)は約280〜300キロカロリー前後であることが多く、その大半を脂質が占めています。
脂質が多いということは、それだけ腹持ちが良いということでもありますが、食べ過ぎれば当然カロリーオーバーにつながります。さらに、マルチョウは甘辛いタレで味付けされることが多いため、糖分も一緒に摂取してしまいがちです。ご飯やお酒が進む味ですが、ダイエット中の方は注意が必要です。
しかし、マルチョウの脂にはコラーゲンも含まれており、美容の面で注目されることもあります。一概に「悪」とは言えませんが、摂取する量と頻度には気を配るべき部位だといえるでしょう。
ダイエット中ならシマチョウがおすすめ
少しでもカロリーを抑えたいのであれば、シマチョウを選ぶのが正解です。シマチョウ(大腸)のカロリーは100グラムあたり約160〜200キロカロリー程度。マルチョウと比べると3割から4割ほど低くなっています。これは、シマチョウが筋肉質で脂の割合が控えめだからです。
さらにシマチョウは、しっかりとした噛み応えがあるため、自然と咀嚼回数が増えます。よく噛むことで満腹中枢が刺激され、少ない量でも満足感を得やすいというダイエット向きのメリットもあります。また、糖質の代謝を助けるビタミンB12などの栄養素も含んでいるため、栄養バランスの面でも優秀です。
ダイエット中だけどどうしてもホルモンが食べたいという時は、シマチョウを塩ダレで注文し、野菜と一緒にゆっくりとよく噛んで食べるのがベストな方法です。
焼き網で美味しく仕上げるコツは?
注文したホルモンが届いたら、次はいよいよ「焼き」の工程です。シマチョウとマルチョウは、適当に焼いてしまうと脂が落ちすぎて火柱が上がったり、逆に生焼けになったりと失敗しやすい部位でもあります。それぞれの良さを引き出すプロ級の焼き方をご紹介します。
焼き方のコツをマスターしておけば、安いお肉でも驚くほど美味しく仕上がります。焦らずじっくり向き合ってみましょう。
皮目から焼いて脂の流出を防ごう
シマチョウでもマルチョウでも、鉄則は「皮から焼くこと」です。
特にシマチョウの場合は、ひだのある皮の面を先に下にして焼き始めます。
- まず、ひだのある皮の面を網に乗せ、じっくりと焼く。
- 皮がパリッとして香ばしい焼き色がつくまで待つ。
- 皮が焼けたら、裏返して脂の面をさっと炙る。
このように焼くことで、脂が必要以上に溶け出すのを防ぎ、旨みをギュッと閉じ込めることができます。脂の面から焼いてしまうと、すぐに脂が溶けて網の下に落ち、炎が上がって肉が黒焦げになってしまうので注意しましょう。
マルチョウの場合も、外側の皮がキツネ色になるまで転がしながら焼き、最後に中の脂を温めるイメージで仕上げるのが理想です。
焼き上がりのタイミングを見極める方法
ホルモンを焼くときに最も難しいのが、「いつ網から上げるか」という判断です。見た目が白っぽいため、火が通っているのか不安になりがちですが、いくつかのサインで見分けることができます。
まず、お肉の大きさに注目してください。シマチョウもマルチョウも、火が通るとギュッと縮んできます。特にマルチョウは、中の脂が熱くなってプクプクと沸騰するように泡立ち始めたら、それが食べごろのサインです。
また、皮の部分が箸で触った時に「カリッ」とした感触になっていれば合格です。反対に、あまりに長く焼きすぎると、せっかくの脂がすべて溶けてなくなってしまい、ゴムのような食感の皮だけが残ってしまいます。「皮はパリッと、脂はプルッと」の状態を目指して、こまめに網の上を確認しましょう。
料理に合わせて使い分けよう
シマチョウとマルチョウにはそれぞれの良さがあるため、料理によって使い分けるとさらに美味しさが引き立ちます。もちろん好みはありますが、一般的な使い分けの例を知っておくと、家庭で料理をするときやお店選びのヒントになります。
焼肉の定番として楽しむなら?
焼肉で食べるなら、やはり「シマチョウ」が王道です。
香ばしく焼けた皮の食感と、噛むたびに溢れる肉の旨みは、白いご飯にもビールにも最高に合います。
シマチョウは味付けの幅も広く、濃厚な味噌ダレでこってり食べるのはもちろん、新鮮なものであれば塩とレモンだけでシンプルに味わうのも絶品です。お肉の味をしっかり感じたい大人の焼肉には、シマチョウが欠かせません。
一方でマルチョウも焼肉で人気ですが、こちらは「脂をメインで楽しみたいとき」のサイドメニュー的な立ち位置で注文するのがおすすめです。脂の甘みが強いので、食事の後半よりも、食欲が旺盛な前半戦に食べるのが美味しく感じられます。
もつ鍋のコクを出すなら?
冬の定番、もつ鍋に欠かせないのは「マルチョウ(小腸)」です。
もつ鍋の美味しさは、スープに溶け出したホルモンの脂の甘みにあります。
マルチョウを鍋に入れると、中の脂がスープにじゅわっと溶け込み、出汁に驚くほどのコクと奥行きを与えてくれます。キャベツやニラなどの野菜がその脂を吸い込み、野菜そのものが驚くほど甘く美味しくなるのです。また、煮込んでも硬くなりにくく、プルプルの食感が維持されるのも小腸系の強みです。
もちろん、シマチョウを入れても美味しいですが、シマチョウは煮込みすぎると少し硬さが出ることがあります。もつ鍋でとろけるような食感を追求するなら、マルチョウ、あるいは裏返していない状態の「コプチャン(小腸)」を選ぶのが正解です。
まとめ:好みに合わせた選び方の再提示
シマチョウとマルチョウの違いについて解説してきました。牛の大腸でシマ模様があり、しっかりとした噛み応えと肉の旨みが楽しめるのがシマチョウ。対して、小腸を裏返して脂を閉じ込め、プルプルとした柔らかさと濃厚な甘みを堪能できるのがマルチョウです。
どちらが優れているということはありません。噛むほどに広がる旨みをじっくり味わいたいならシマチョウを、とろける脂の幸せに浸りたいならマルチョウを選んでみてください。それぞれの特徴を知った上で網に乗せれば、いつものホルモンがより一層美味しく感じられるはずです。
今度焼肉店を訪れた際は、ぜひ見た目や食感の差を自分の舌で確かめてみてください。